当初、映画製作会社から依頼を受けた時、私はウーン、ハァー、モグモグと煮え切らない返事をしていたのだが、製作側の熱意に感動してお手伝いを引き受けた。

この映画は本年、1月18日に公開され好評を得て大成功のようで、協力させて頂いた者にとっては嬉しい結果だ。
私は特に火矢のシーンに深くかかわっていて、火矢の製作をし撮影現場では火矢による攻撃法の指導などを協力した。(*映画全体のアクション等の監修を行っているわけではございません。)

現場では私自身も具足を着用して、足軽頭のような立場で火矢隊の中央に立ち、エキストラの人たちに動きを真似てもらったり、走りながら射るという方法を組み入れ、迫力を 出そうと試みた。
ガチ甲冑合戦(日本甲冑合戦之会)の古参メンバーの一部は、他のシーンでも走ったり武器を振るったり大変だったようで、まだ肌寒いのに汗をかきながら敵役を頑張ったようだ。
彼らは生の顔でも十分に怖いので、メイクが必要だったのかぁ~という余談はさておき、弓矢の話に戻そう。
火矢は最少限、次の条件を満たしていなくてはいけない。
1:矢軸(竹)が簡単に燃えないこと。
2:火矢を放った後、飛翔中も火が消えずに標的に火が付いたまま刺さること。
3:火矢の火で射手の手が、アッチッチーとなって火傷しないこと。
3は簡単で、矢を長くするか、射手に我慢してもらうかで解決がつく。普通は我慢をする方法を、誰もなぜか選はない。
1も2も 構造上の工夫が必要だが、2は特に難しい。矢の速度が速いほど風圧が上がり、火が消えてしまう。
しかし解決方法が解ってしまえば、なんだ、にゃんだ、こんなことかぁ~、という話なのだが。
これらの仕掛けについては、わるーい子が真似をしてはいけないので、ここでは書きません。
次に射法だが、戦国時代の弓の射法について究明しようとすればするほど、一般に知られている射法から離れていく。
例えば、今の弽を手に装着すると、刀や槍を使えなくなる。もちろん戦国時代は、このような弽は存在しない。戦国時代は、せいぜい鹿革などの手袋程度だ。
しかも手袋を着用できたのは上級の武将くらいで、足軽たちはボロ布を巻いて親指を守る程度であったと思う。
矢筈も今のもの とは違い、竹に三角の切り込みを入れただけだ。この矢筈のほうが、矢を素早くつがえて連射するには適している。
陣笠や兜を着けて、腰回りに刀や武具を装着すると、これらが邪魔になるので弓を斜めに倒して矢を射るほうがスムーズだ。
重心は後ろ脚に置き、体を少し“く”の字に曲げると置盾や土嚢に隠れながら射るのが容易になり、射角や射方向の変更も瞬時可能である。
特に狭いスペースで、火矢を射るために軍団が三列横隊などを組んだ場合、前列の兵の背旗が風になびくと、この背旗に火矢が当たり引火しそうになる。

撮影当日、撮影場所の伊勢安土桃山城下街は風が強かった。

そこで、上記のような後ろ重心、くの字の体勢をする射法をウルサク注意して守ってもらい、自分の腰 の引き具合で前方の味方の背旗の空間をぬって火矢を射ることを徹底させた。
これは実際に甲冑をつけて軍団を組んで、火矢を射ってみないと体感できない貴重な経験だ。
いくらガチ甲冑合戦でも多くの観客に囲まれるなか、本物の火矢を射ることはできない。
したがって、今回の映画撮影に協力できたのは、私たちにとっても良い検証の機会を得ることができラッキーであった。
あの日、なぜあんなに風が吹いたのかと思うほど、今夜の城下街は、静かに月明かりに照らされ、冷厳の世界で眠っている。
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国際武術文化連盟(IMCF) 日本甲冑合戦之会・護身術功朗法・門同流兵法 TEL 06-6962-3889 / FAX 050-3371-3211 / E-MAIL koroho_goshin@yahoo.co.jp 功朗法 http://www.koroho.jp/ 日本甲冑合戦之会 http://armoredsamuraibattle.web.fc2.com/
代表 横山雅始
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