ちょっと不気味な刀剣の話

皆さんこんにちは。


広報担当のIOROIです。


今回は横山先生が実際に体験した、日本刀にまつわるちょっとホラーなお話です。



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随分と以前のことになる。


会議を行うため英国ロンドンで3日間ほど滞在していたときだ。


時間があればロンドンの骨董屋や蚤の市を回って、日本の刀剣を買いたいと徘徊していた。


当時は日本の刀剣の価値は、欧米ではまだ十分に知られておらず、価格も安く取引されていた。


刀剣やサーベルを出している骨董屋を回っても日本刀は全く発見できなかった。


2日間が過ぎ諦めかけていたころ、3日目の明け方、いやな夢を見て目が覚めた。


血がべったりと付いた日本刀(軍刀)が、ホテルの壁に刺さっている夢である。


私は刀剣探しばかりやっているので、きっと潜在意識に日本刀が張り付いていて嫌な夢を見たのだと考えた。


しかし、その日の会議は午後からだったので、午前中に知り合いの骨董屋を もう一度訪れてみることにした。


私がその店に入ると、店の主人は「丁度いいところに来たね。


昨日、女房が仕入れてきた錆びた日本刀があるから、見てみるかね」と誘ってきた。


「もちろん」と私は答えて、その刀を見せてもらった。


軍刀.jpg
※写真 軍刀


第二次世界大戦の日本陸軍の拵えをそのままにした軍刀である。


抜いてみると刀身は錆び切りはしてあるものの、錆び跡がまだ残り、刃毀れが物打ちにある。


何か堅いものに切り込んだようだ。


柄を外したが、柄木は割れていて血がしみ込んで変色している。


銘は明確に読み取れ関住**兼*とある。


第二次世界大戦中の将校の注文打ちのようで、いわゆるレール刀とは全く違い鍛えた様子もわかる。


私はかなり値切ったのち、この刀を入手しロンドンでの仕事を終えて、ウキウキ しながらフランスのコートダジュールに借りていた小さなマンションに戻った。


入手した刀は研ぎ直して柄を制作した。


鞘は軍刀拵えのままにしておいた。


鞘までやり替えるには時間と材料がなさすぎる。


私のマンションの部屋は1Fだったので、小さな庭があった。


その庭に肉屋で買ってきた骨付きの羊の腿を吊るして、タオルを巻き斬ってみることにした。


刃渡り2尺1寸ほどのこの刀では、たぶん寸断できないだろうと思いながら振り込んだ。


見事に骨ごと寸断できる。


私はこの刀が大いに気に入ったが、何度研いでも刀身にうっすらと浮かぶシミのようなものが消えない。


別に切れ味に影響するわけではないので、私は気にしないことにした。



そして半月後、フランスでの指導やアレンジその他が終わり、私は帰国することになった。


パリまで移動し、パリで一泊したのちCDG空港から日本行きの飛行機に乗った。


もちろん、刀は機内に持ち込めないので手荷物として預けた。


関西空港に到着した私はスーツケースを取り、刀の包みが出てくるのを待った。


しかし、一向に出てこない。


刀剣類は日本へ持ち込むには通関手続き、その後、教育委員会への登録審査を受け、刀剣登録書が発行されることになる。


とにかく、通関手続きなどに手間取るので、早く刀の包みを回収したかったのだが、出てこないのでは仕方がない。


ついに私は、ロストバゲッジ(紛失手荷物)の申請を空港ですることにした。


そして、手続きが完了し、暫くすると地上職員の女性がこちらにやってきた。


「お客様の荷物ではないですか。お客様の便より早く到着したキャセイ航空に乗っていたのです」私は 「私より早く着いていたのですか。日本に???」刀は戻ってきたが、なんだか少し気持ちが悪くなってきた。


そんなに早く日本に帰りたかったのだろうか、この刀は・・・。


どこで、どんな風に、私より早い便に乗ったのだろうか。



その後、登録書を発行頂いて、拵えも新調して試斬を何度もこの刀でやった。


その度に、いくら調整しても、すぐに目釘、柄ががたつき調子が悪くなる。


私はこの刀が御しにくい荒馬のように思えた。


ついに私はこの刀を作った刀匠に連絡を取り、持ち主の遺族に返そうと考えた。


しかし、この刀を制作した刀匠は亡くなっており息子さんの代になっていた。


その息子さんが言うには、第二次世界大戦当時の注文者のリストなどは全て焼失し、ないとのことだ。


それでは、遺族に返却することもできない。


私はこの刀で練習するのを止めて静かに休ませることにした。



その後、この刀の話を聞きつけたコレクターが譲って欲しいと言ってきた。


特にイワクつきの妖刀もどきに興味があるそうだ。


自分の手元に置いておいても使うことがなければ意味がないので、私は譲ることにした。


それから、半年の後、そのコレクターから久しぶりに連絡があった。


しばらく病気がちで連絡できなかったことと、諸事情があって店を一つ閉めることになったという連絡であった。


(-ω-;)ウーン。


公式HPはこちら
http://armoredsamuraibattle.web.fc2.com/index.html

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